こんにちは。車の広場 運営者のヨコアキです。
車検の時期が近づくと、愛車の状態が気になりますよね。特にタイヤは、溝の深さはもちろんですが、側面に細かいひび割れを見つけて「これって車検に通るのかな?」「交換費用がかさむと痛いな……」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、タイヤのひび割れに関する車検の判定基準や合格ラインは、溝の深さのように明確な数値があるわけではなく、検査員の判断に委ねられる部分が大きいのです。そのため、ディーラーやオートバックスなどの整備工場によっても対応が異なるケースがあります。
この記事では、そんなモヤモヤしやすいタイヤの保安基準や、無駄な出費を抑えるためのポイントについて、私自身の経験も交えながら分かりやすくお話しします。
この記事でわかること
- 車検で不合格となるタイヤのひび割れレベルと具体的な判定基準
- 検査を受ける場所によって合否の判断が分かれる理由
- ネット通販などを活用してタイヤ交換費用を安く抑える方法
- 愛車のタイヤを長持ちさせるための日常的なメンテナンス
車検のタイヤひび割れ判定基準を徹底解説
まずは、一番気になる「どこまでのひび割れならセーフで、どこからがアウトなのか」という基準について深掘りしていきましょう。実は法律上のルールと現場での運用には、少しだけ「あそび」のような部分があるんです。ここを理解しておくと、無駄に焦らなくて済みますよ。
タイヤ側面のひび割れは保安基準不適合?

結論から言うと、タイヤの側面にひび割れがあるだけでは、直ちに車検不合格(保安基準不適合)になるわけではありません。
これには、車検のルールを定めている「道路運送車両の保安基準」という法律の書き方が大きく関係しています。ご存知の方も多いと思いますが、タイヤの溝に関しては「接地部の溝の深さが1.6mm以上であること」という非常に明確かつ定量的な数値基準が存在します。タイヤの溝の中に設けられたスリップサイン(ウェア・インジケーター)が1箇所でも露出していれば、問答無用で整備不良となり、車検には通りませんし、道路交通法違反にもなります。
しかし一方で、タイヤの「ひび割れ」に関しては、実は溝のような「深さ〇mmまでOK」といった具体的な数値基準が存在しないのです。保安基準の細目告示では、タイヤの損傷について「亀裂、コード層の露出等著しい破損のないものであること」と記されているのみです。この「著しい破損」という表現がポイントで、非常に解釈の幅が広い言葉なんですよね。
つまり、「著しい破損」に至っていないと判断されれば、たとえタイヤの側面に無数の細かいひび割れが入っていたとしても、法的には車検に適合するということになります。私たちが日常的に駐車場で見かけるような、経年劣化によるタイヤ側面の細かいシワや、表面的なひび割れ程度であれば、タイヤとしての基本的な機能(空気圧の保持や荷重の支持)には直ちに影響しないとみなされ、合格することがほとんどです。
ただし、数値基準がないということは、裏を返せば「検査員の主観による判断」のウェイトが大きいということでもあります。検査員が「このひび割れは危険だ」と判断すれば不合格になりますし、「まだ大丈夫」と判断すれば合格になります。この「曖昧さ」こそが、ユーザーを混乱させる一番の原因なんですよね。だからこそ、私たちドライバー自身も「どこが限界ラインなのか」を正しく理解しておく必要があります。
【豆知識:溝とひび割れの違い】 タイヤの溝(1.6mm)はスリップサインという「客観的な指標」で機械的に判定されますが、ひび割れは検査員の「目視と経験」による定性的な判断になります。そのため、検査員の厳しさや経験値によって、多少の判定ブレが生じることがあるのです。
内部のワイヤーが見えたら即交換が必要

では、曖昧な基準の中で、どのレベルからが「著しい破損」とみなされて一発アウト(不合格)になるのでしょうか。これには明確なレッドラインが存在します。
それは、「タイヤ内部のコード層(ワイヤーや繊維)が露出して見えているかどうか」です。
少し専門的な話になりますが、タイヤというのは黒いゴムの塊に見えて、実は非常に複雑な多層構造をしています。ゴムはあくまで表面を覆っている保護材や摩擦材に過ぎず、タイヤの強度を支えている「骨格」は、その内部にある「カーカス」や「ベルト」と呼ばれる補強材です。これらはポリエステルやナイロンの繊維、あるいはスチール(鉄)のワイヤーでできており、タイヤの内圧に耐え、車重を支えるための最も重要なパーツです。
ひび割れが表面のゴム層を突き抜け、深部まで進行してパックリと口を開け、この内部のコード(白い繊維や、金属光沢のあるワイヤー)が肉眼で確認できる状態になっていると、車検は100%通りません。
なぜなら、コードが露出しているということは、タイヤの骨格が外部環境にさらされていることを意味するからです。特にスチールコードの場合、露出した部分から雨水や湿気が侵入すると、あっという間に錆びて腐食が進みます。腐食したワイヤーは強度が劇的に低下し、走行中のタイヤの変形や空気圧に耐えきれず、ある日突然「バン!」という爆音と共に破裂する「バースト」を引き起こす原因になります。
高速道路で時速100kmで走行中にタイヤがバーストしたら……想像するだけで恐ろしいですよね。コントロールを失い、大事故につながる可能性が極めて高いです。ですから、コードの露出は単なる「整備不良」ではなく、「走る凶器」に近い状態だと認識してください。
【危険です!直ちに対応を】 コードが見えている状態は、タイヤの強度が極端に落ちており、いつバーストしてもおかしくない緊急事態です。車検の合否以前の問題として、命を守るために即座にスペアタイヤに交換するか、レッカーを手配して交換してください。そのまま走行するのは絶対にやめましょう。
ディーラーと陸運局で異なる判断基準

「このくらいのひび割れなら大丈夫だろう」と思ってディーラーに車検見積もりを出したら、「タイヤ4本とも交換しないと車検に通せません」と言われて驚いた経験はありませんか?一方で、知人は「ユーザー車検でそのまま通ったよ」なんて言っていたり。実はこれ、タイヤの状態が違うのではなく、「検査を実施する主体の立場と責任」の違いが大きく関係しているんです。
大きく分けると、車検には「陸運支局(車検場)の検査官」による検査と、「指定整備工場(ディーラーなど)」の自動車検査員による検査の2パターンがあります。
1. 陸運支局の検査官(ユーザー車検など)
彼らの仕事は、あくまで「法の番人」として、「検査をしたその瞬間に、車両が保安基準の最低ラインを満たしているか」を確認することです。極端な言い方をすれば、車検場を出た1分後にタイヤがパンクしたとしても、検査の瞬間に基準を満たしていれば合格なのです。そのため、ひび割れに関しても、「コード層が露出していない」という最低基準さえクリアしていれば、「合格」と判定されるケースが多いです。判定は比較的緩やかで、あくまで「現状確認」がメインです。
2. ディーラーや指定整備工場の検査員
一方、ディーラーなどの整備工場は立場が異なります。彼らは車検を通すだけでなく、「予防整備」のプロフェッショナルとしての責任を負っています。車検というのは、次の車検までの2年間、ユーザーが安全に車に乗れることを担保するための機会でもあります。
もし、ギリギリの状態で車検を通して、数ヶ月後にタイヤがバーストして事故が起きたらどうなるでしょうか?「あそこのディーラーで車検を通したばかりなのに整備不良だ!」と、工場の信用問題に関わりますし、最悪の場合は整備責任を問われるリスクもあります。そのため、彼らは「次の2年間を安全に乗り切れるか」という厳しい視点で判断します。「今はコードが出ていないけれど、あと半年もすれば危険な状態になるだろう」と予見されるレベルのひび割れ(レベル3〜4)であれば、安全マージンを取って「交換必須」とするのです。
つまり、「陸運局に持ち込めば通るレベルのひび割れでも、ディーラーでは交換必須とされる」というダブルスタンダードのような現象が起きるのは、この「リスク管理」と「安全への責任感」の違いによるものなのです。ディーラーが厳しいのは、単に売上を上げたいからだけではなく、あなたの安全を真剣に考えている裏返しでもあるんですね。
ひび割れレベルごとの交換時期の目安
検査員の判断に任せるだけでなく、私たちユーザー自身も客観的な基準を知っておくことが大切です。タイヤメーカーなどが加盟するJATMA(一般社団法人 日本自動車タイヤ協会)では、タイヤのひび割れ(クラック)の進行度をレベル1からレベル5までの5段階に分類して、点検や交換の指針を示しています。この基準を頭に入れておけば、整備工場で説明を受けた際にも納得して判断できるようになります。
| レベル | 状態の詳細 | 判断・アクション目安 |
|---|---|---|
| レベル1 | 拡大鏡などで見ないと判別できないほどの、ごく微細なひび割れ。 | 【問題なし】 新品から少し経過すれば自然に発生します。全く気にする必要はありません。 |
| レベル2 | 肉眼で確認できるが、髪の毛のように細く、深さのない表面的なシワやひび割れ。 | 【継続使用OK】 ゴムの経年劣化が始まっていますが、機能上は問題ありません。定期的な空気圧チェックを継続してください。 |
| レベル3 | ひび割れがはっきりと亀裂として認識でき、長さや幅が増している状態。 | 【要注意・経過観察】 車検は通る可能性が高いですが、ゴムの劣化が進んでいます。高速道路走行や長距離移動が多い場合は、交換を検討し始めるべきフェーズです。 |
| レベル4 | ひび割れの深さが進行し、亀裂を開くと奥が見えそうな状態(コードには未達)。 | 【交換推奨】 ディーラー車検では不合格になる可能性大。バーストのリスクが高まってくるため、早急な交換を強く推奨します。 |
| レベル5 | 亀裂が大きく開き、奥に内部のコード(繊維やワイヤー)が見えている。 | 【即交換・走行禁止】 極めて危険な状態。車検は通りません。いつ破裂してもおかしくないため、使用を中止してください。 |
(出典:一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)『タイヤのキズやヒビ割れ』)
私の経験則で言うと、レベル1〜2は「タイヤの肌荒れ」程度なので無視してOKです。問題はレベル3を超えてきたあたりですね。街乗り中心でスピードを出さないなら多少引っ張れますが、高速道路を使って帰省したり旅行したりする予定があるなら、迷わず交換した方が精神衛生上も良いです。レベル3を見つけたら「次のボーナスでタイヤ交換かな」と予算計画を立て始めるのが、賢いドライバーの対応だと言えます。
ユーザー自身で可能なタイヤの見分け方

「自分じゃ判断できないから、とりあえず店で見てもらおう」と思う前に、自宅の駐車場で簡単にできるセルフチェックを試してみましょう。特別な工具は必要ありません。少しの時間と観察眼があれば十分です。
まず、車を明るい場所に停めます。そして、前輪のタイヤの状態をよく見るために、ハンドルを左右どちらかに一杯まで切ってからエンジンを止めてください。こうすると、タイヤの接地面(トレッド)と内側の側面が外を向くので、観察しやすくなります。
【セルフチェックの具体的な手順】
1. スリップサインの確認
まずは基本の「溝」です。タイヤの側面に「△」のマークがあります。その延長線上の溝の中を覗き込むと、一段盛り上がった部分があります。これがスリップサイン(高さ1.6mm)です。この盛り上がりがトレッド面と同じ高さになっていたら、寿命です。
2. サイドウォールのひび割れ確認
タイヤの側面(メーカー名などが書いてある部分)を全周にわたって見渡します。特に、ホイールに近い部分や、地面に近い部分は荷重がかかってひび割れやすいです。懐中電灯やスマホのライトで照らすと、細かい亀裂も見つけやすくなります。
3. 「ピンチカット」の有無
ひび割れ以上に怖いのがこれです。タイヤの側面の一部が、たんこぶのようにポコッと盛り上がっている箇所はありませんか?これは「ピンチカット」と呼ばれ、縁石などに強く乗り上げた衝撃で、内部のコードが断裂している状態です。表面のゴムだけで内圧を耐えている風船のような状態で、非常に危険です。これがあったら即交換です。
4. 亀裂の深さチェック
目立つひび割れがあった場合、決して無理はいけませんが、爪先で軽く亀裂の周辺を押してみたり、少し広げてみたりして(ゴムを傷つけない程度に)、奥の様子を確認します。底にまだ黒いゴムが見えるなら緊急性は低め。もし、奥に白い糸のようなものや、金属のキラッとするものが見えたら、それはコード層です。即アウトのサインです。
このチェックを、洗車のついでや給油のタイミングで行う癖をつけておくと、タイヤの異変に早期に気づくことができます。「なんか変だな?」と思ったら、その感覚はだいたい合っています。すぐにプロに見てもらいましょう。
車検前のタイヤひび割れ対策と交換費用
「タイヤ交換が必要そうだけど、車検費用だけでも税金や整備費で高いのに、さらにタイヤ代まで……」と頭を抱えている方も多いと思います。タイヤは車の消耗品の中で最も高額な部類に入りますから、その気持ちは痛いほど分かります。しかし、購入場所や交換方法を工夫するだけで、数万円単位で節約することも十分に可能です。ここでは、少しでも出費を抑えるための賢い戦略と、タイヤを長持ちさせるコツについて詳しくお話しします。
オートバックスや通販のタイヤ交換費用

タイヤ交換にかかる費用は、「どこで買うか」そして「どこで交換するか」によって驚くほど変わります。同じメーカーの同じタイヤでも、購入ルートが違うだけで価格が倍以上違うことも珍しくありません。私が実際にリサーチしたり、これまで利用してきた感覚だと、費用の安さは一般的に以下のようになります。
【高い】 ディーラー > カー用品店(オートバックス等) > ガソリンスタンド > タイヤ専門店 > ネット通販 【安い】
具体的な数字で見てみましょう。例えば、一般的なミニバンやセダン(プリウスやノアなど)でよく使われる「195/65R15」というサイズで、国産スタンダードタイヤを4本交換する場合の総額(タイヤ代+工賃+廃タイヤ処分料)イメージです。
1. ディーラー(全部お任せ)
安心感は最強です。純正採用されている銘柄や、信頼性の高いトップブランド(ブリヂストンやダンロップなど)を提案されます。しかし、タイヤ本体がほぼ定価に近い価格設定であることが多く、工賃も1本あたり2,000円〜3,000円以上と高めです。総額で8万円〜12万円コースになることも覚悟が必要です。「手間をお金で買う」感覚ですね。
2. 大手カー用品店(オートバックス・イエローハットなど)
品揃えが豊富で、キャンペーン時期などを狙えば安く買えます。特に狙い目なのが、そのお店独自の「プライベートブランド(PB)」のタイヤです。有名メーカーが製造を受託していることも多く、性能は十分ながら価格は抑えられています。PBや特価品を選べば、総額5万円〜8万円程度に抑えられます。会員割引などで工賃が安くなる場合もあります。
3. ネット通販 + 持ち込み交換(最強の節約術)
最も経済合理性が高いのがこの方法です。「Amazon」「楽天市場」「価格.com」あるいは「オートウェイ」などのタイヤ通販サイトでタイヤを自分で購入し、提携している整備工場に直送して交換してもらうパターンです。実店舗を持たない分、タイヤ単価が圧倒的に安く、アジアンタイヤ(クムホ、ナンカンなど)なら1本数千円で手に入ります。国産メーカー品でも実店舗より3〜4割安いことはザラです。工賃込みでも総額3万円〜6万円で済むことが多く、ディーラー見積もりの半額以下になることも珍しくありません。
【おすすめの節約戦略】 車検の見積もりで「タイヤ交換が必要です」と指摘されたら、その場では「予算オーバーなので、タイヤは自分で交換してきます」と断りましょう。そして、車検の入庫日までにネット通販で安くタイヤを購入し、近所の持ち込み対応店で交換を済ませてから、車検に持ち込むのです。これが最も賢い「分離発注」です。最近は「タイヤピット」のように、購入と同時に取付店の予約まで完結するサービスも増えているので、ハードルはかなり下がっていますよ。
製造年週から見るタイヤ寿命の確認方法

中古車を買った場合や、あまり乗らない車の場合、「溝もたっぷり残ってるし、ひび割れも少ないけど、これ一体何年前のタイヤだっけ?」と疑問に思うことがありますよね。タイヤのゴムは生鮮食品のようなもので、使用していなくても時間が経つほど油分が抜けて硬化し、本来のグリップ性能が落ちていきます。
実は、タイヤの側面を見れば、誰でも簡単に「誕生日」を知ることができます。タイヤのサイドウォールには、製造時期を示す4桁の数字が刻印されています(多くの場合、少し凹んだ楕円形の枠に囲まれています)。
読み方のルール:[週番号(2桁)] + [西暦下2桁]
- 例:「2422」 と書いてある場合
- 後ろの2桁「22」は、西暦の下2桁、つまり2022年を指します。
- 前の2桁「24」は、その年の第24週目を指します。1年は約52週あるので、24週はおおよそ6月中旬頃です。
- つまり、このタイヤは「2022年の6月中旬」に製造されたものだと分かります。
- 例:「4523」 と書いてある場合
- 2023年の第45週(11月頃)に製造されたタイヤです。
【注意:3桁の数字の場合】 もし「109」のような3桁の数字しか見当たらない場合、それは1999年以前の製造コード([週][年1桁])である可能性があります。その場合、製造から20年以上経過している「化石」のようなタイヤですので、溝があろうとなかろうと、即刻使用を中止してください。非常に危険です。
一般的に、タイヤメーカーは「使用開始から5年」経過したタイヤは整備士による点検を受けることを推奨しています。そして、「製造から10年」経過したタイヤは、たとえ溝が残っていても、外観がきれいでも、ゴムの劣化により安全性が担保できないため交換することを強く推奨しています。
私の経験上、青空駐車の環境だと、製造から4〜5年目でひび割れが目立ち始め、7〜8年目のタイヤはゴムがカチカチに硬化して、雨の日のマンホールや白線の上で「ツルッ」と滑る感覚が出始めます。スタッドレスタイヤなら3〜4年で寿命と言われますが、夏タイヤでも「5年」を一つの折り返し地点として意識しておくと良いでしょう。
タイヤの劣化を防ぐ保管とメンテナンス
せっかく安くないお金を出して交換した新品タイヤ、できるだけ長く良い状態で持たせたいですよね。タイヤの寿命を縮めるひび割れ(クラック)の主な原因は、「紫外線」「オゾン」「熱」、そして意外なことに良かれと思ってやる「過度なタイヤワックス」です。
1. 紫外線とオゾン対策
ゴムにとって直射日光(紫外線)は大敵です。分子レベルで結合を破壊し、表面をボロボロにします。また、大気中に含まれるオゾンもゴムを攻撃します。屋外駐車の場合は避けようがない部分もありますが、できるだけ日陰に駐車する、あるいは長期間乗らない場合はタイヤカバーをかけるだけでも、劣化スピードは劇的に変わります。
2. 空気圧の管理
空気圧不足のまま走行すると、タイヤが過度にたわみ(変形し)、サイドウォールに大きな負担がかかります。また、変形による発熱でゴムの劣化も進みます。月に1回はガソリンスタンドなどで適正空気圧に調整しましょう。これはひび割れ防止だけでなく、燃費向上にも直結するので一石二鳥です。
3. タイヤワックスの選び方
ここが盲点になりがちなのですが、タイヤを黒くピカピカに見せる「タイヤワックス」には注意が必要です。ワックスには大きく分けて「油性」と「水性」があります。
- 油性ワックス: 艶出し効果が高く安価ですが、石油系溶剤が含まれていることが多く、これがタイヤのゴムに含まれる保護成分(老化防止剤)を溶かし出してしまう恐れがあります。頻繁に塗りすぎると、逆にひび割れを早める原因になります。
- 水性ワックス: シリコンなどを主成分としており、ゴムへの攻撃性が低く優しいのが特徴です。艶の持ちは油性に劣りますが、タイヤの健康を考えるなら断然「水性ワックス」がおすすめです。
【保管のコツ】 スタッドレスタイヤなどをシーズンオフで保管する際は、「洗浄して汚れ(特に油分や化学物質)を落とす」「完全に乾かす」「直射日光と雨風の当たらない涼しい場所に置く」「空気圧を規定値の半分程度に抜く(内圧による負担を減らすため)」のが鉄則です。保管状況が悪いと、いざ履き替えようとした時にひび割れだらけ……なんてことになりかねません。
走行距離が少ない車ほど注意が必要な訳
「うちは週末の買い物にしか車を使わないし、年間走行距離も3,000kmくらいだから、タイヤは全然減らないし大丈夫!」と思っていませんか?実はこれ、ひび割れに関しては全くの逆効果で、むしろ劣化リスクが高い環境なんです。
なぜなら、タイヤのゴムには、オゾンや紫外線から自身を守るための「老化防止剤(ワックス成分)」があらかじめ練り込まれています。この成分は、タイヤが走行して回転し、適度に変形・発熱を繰り返すことで、ゴムの内部から表面へとじわじわ染み出してくるように設計されています。これを専門用語で「ブルーミング現象」と呼びます。タイヤの表面がうっすら茶色っぽくなることがありますが、あれはこの保護成分が染み出して膜を作っている証拠なんですね。
つまり、全然走らない車(ずっと駐車されたままの車)は、このタイヤの運動が起こらないため、保護成分が表面に出てこず、供給がストップしてしまうのです。その結果、タイヤの表面が「乾燥肌」のような状態になり、油分を失ってカサカサになり、オゾンや紫外線の攻撃をダイレクトに受けて激しくひび割れてしまうのです。
「溝はバリバリ残っているのに、サイドウォールがひび割れだらけで交換になった」というケースは、走行距離が少ないサンデードライバーの車に非常に多い現象です。タイヤにとっては、適度に走って動かしてあげることが、実は一番のメンテナンス(アンチエイジング)になるんですね。もしあまり乗らない場合でも、2週間に1回くらいは近所をひと回りして、タイヤを揉んであげると長持ちしますよ。
車検時のタイヤひび割れ対策まとめ
今回は、多くのドライバーを悩ませる「車検におけるタイヤのひび割れ基準」について、判定の仕組みから費用対策まで徹底的に解説してきました。情報が多かったと思いますので、最後に重要なポイントを整理しておきましょう。
- 車検の合否基準: 「著しい破損(コード層の露出)」がなければ、法的には基本的に合格する。細かいひび割れ程度なら過度な心配は不要。
- 判定のブレ: 陸運局は「現状の最低基準」を見るため甘めだが、ディーラーは「将来の安全」を見るため厳しめに判定(交換推奨)する傾向がある。
- 交換の目安: ひび割れレベル3(深い亀裂)以上になったら、車検に通ったとしても交換を検討すべき。高速道路を利用するなら命に関わるのでケチらないこと。
- 費用の節約: ディーラーでの交換は割高になりがち。車検前にネット通販でタイヤを安く購入し、持ち込み交換を済ませておくのが最強のコストダウン術。
- 維持管理: 「走らない車」ほどひび割れやすいというパラドックスを知っておくこと。水性ワックスの使用や、適度な走行が寿命を延ばす。
タイヤは、走る・曲がる・止まるという車の全ての基本動作を支えている、ハガキ1枚分ほどの接地面積しかない「命を乗せている唯一のパーツ」です。車検に通るかどうかという「法的クリア」ももちろん大事な視点ですが、何より大切なのは、あなた自身や同乗する家族、そして周囲の交通参加者が「安心して安全に乗れるかどうか」です。
「まだいけるかな?」「ちょっと怖いな」と迷うような状態なら、早め早めの判断で交換することをおすすめします。新しいタイヤに履き替えた時の、あの吸い付くような走り心地と安心感は、何物にも代えがたい価値があります。もし判断に迷ったら、一人で悩まずにガソリンスタンドやタイヤショップで「これ、まだ大丈夫ですか?」とセカンドオピニオンを聞いてみるだけでも、心の重荷が軽くなりますよ。
この記事が、皆さんの安全で快適なカーライフと、無駄のない賢い車検対策の一助になれば本当に嬉しいです。最後までこれだけの長文を読んでいただき、本当にありがとうございました!
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