日本でアメ車に乗るなら、やはり右ハンドルが良いと考える方は多いでしょう。しかし、そもそもアメ車は右ハンドル仕様を作らないという話を耳にしたり、アメリカでは右ハンドル車が禁止されているという噂を聞いたことがあるかもしれません。また、なんで日本は右ハンドルなのか、右ハンドルは日本だけなのかといった疑問も浮かびます。
この記事では、シボレーの右ハンドル事情や、マスタング、右ハンドルのカマロ、ダッジチャレンジャーといった人気車種の現状に迫ります。新車やSUVを含むアメ車の右ハンドル一覧、そして輸入車の実情まで、気になる情報を網羅的に解説します。
この記事でわかるこ
- アメ車に右ハンドル仕様が少ない根本的な理由
- 日本で購入可能な右ハンドルのアメ車一覧
- 人気車種(マスタング、カマロ等)の右ハンドル事情
- 右ハンドルに関する日本と世界の交通事情
なぜ少ない?日本でのアメ車 右ハンドルの現状と理由

車の広場:イメージ
- アメ車が右ハンドル仕様を作らない背景
- アメリカでは右ハンドル車が禁止なのか
- なんで日本は右ハンドル?日本だけなの?
- 輸入車で探すアメ車の右ハンドル事情
- 人気のアメ車SUVに右ハンドルはある?
アメ車が右ハンドル仕様を作らない背景
アメ車に右ハンドル仕様が少ない最大の理由は、アメリカ本国が左側通行の国ではないという点にあります。アメリカは右側通行・左ハンドルが標準であり、自動車メーカーは国内市場を最優先に車両を開発・生産しています。
右ハンドルを採用している国(日本、イギリス、オーストラリアなど)の世界的な市場規模は、左ハンドル市場に比べて限定的です。そのため、メーカーにとって多額の開発コストをかけて右ハンドル仕様を製造するメリットが少ないのが実情です。特にアメ車は、その多くが北米市場をメインターゲットにしているため、輸出用の右ハンドル仕様を積極的に開発する動機が働きにくいのです。
右ハンドル仕様を開発する際の課題
単にハンドル位置を移すだけでなく、ダッシュボードの設計変更、ペダル類の配置、ステアリング機構、さらにはワイパーの向きなど、多くの部品を左右反転させて再設計する必要があります。これには莫大なコストと時間がかかるため、採算が合わないと判断されるケースがほとんどです。
このように、経済的な合理性の観点から、ほとんどのアメリカ車は右ハンドル仕様をラインナップしていないのが現状です。
アメリカでは右ハンドル車が禁止なのか
「アメリカでは右ハンドル車は法律で禁止されている」という話を耳にすることがありますが、これは正確ではありません。
結論から言うと、アメリカの連邦法では右ハンドル車の所有や公道での走行を禁止する法律は存在しません。代表例が、アメリカ合衆国郵便公社(USPS)の配達車両です。配達員が乗り降りせずに歩道側の郵便受けに手紙を投函できるよう、右ハンドル仕様の車両が使われています。
注意点:州ごとの法律と輸入車の登録要件
ただし、アメリカ国内で右ハンドル車を登録・走行させるには、連邦自動車安全基準(FMVSS)への適合が必要です。特に個人が輸入した右ハンドル車の場合、製造から25年以上経過したクラシックカーでなければ登録のハードルが非常に高いのが実情です。州によっては追加の検査が課されることもあり、「禁止」ではないものの、一般の車として乗るには多くの制約があると言えます。
したがって、社会的なインフラや制度が左ハンドルを前提としているため、右ハンドル車が極めて特殊な存在であることは事実です。
なんで日本は右ハンドル?日本だけなの?
日本が右ハンドル・左側通行を採用している理由は、歴史的な背景が大きく関係しています。そして、右ハンドルは決して日本だけの文化ではありません。
日本の交通ルールは、近代化を進める過程でイギリスの制度を参考にしたことが起源とされています。武士が道の左側を歩くことで、すれ違う際に刀の鞘がぶつからないようにしていたという説もありますが、自動車交通に関してはイギリスの影響が大きいというのが通説です。
世界の国・地域の数で見ると約30%が、人口比で見ると約35%が、日本と同じ左側通行・右ハンドルを採用していると言われています。
以下は、右ハンドル・左側通行を採用している主な国や地域です。
地域 | 主な国・地域 |
---|---|
アジア | 日本、インド、インドネシア、タイ、シンガポール、香港、マレーシアなど |
ヨーロッパ | イギリス、アイルランド、マルタ、キプロス |
オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア |
アフリカ | 南アフリカ、ケニア、タンザニア、ジンバブエなど |
このように、特にイギリス連邦に加盟していた国々を中心に、世界には多くの右ハンドルの国が存在します。
輸入車で探すアメ車の右ハンドル事情
正規ディーラーで右ハンドルのアメ車が見つからない場合でも、輸入車という形で探す方法があります。これは主に「並行輸入」と呼ばれるルートで、海外で販売されている右ハンドル仕様車を専門業者が日本に輸入して販売する形態です。
代表的な例が、フォード・マスタングです。マスタングはイギリスでも販売されており、当然ながら右ハンドル仕様が存在します。一部の並行輸入業者は、このイギリス仕様のマスタングを日本に輸入し、国内の保安基準に適合するように改善した上で販売しています。
正規輸入と並行輸入の違い
正規輸入車は、海外メーカーと正式に契約した日本の輸入代理店(インポーター)が販売する車です。メーカー保証が受けられ、全国のディーラーで整備が可能です。一方、並行輸入車は、正規代理店以外の業者が独自に海外から輸入した車を指します。日本では販売されていないグレードや仕様が手に入るメリットがありますが、メーカー保証が適用されず、購入後のメンテナンスは輸入業者や専門工場に依頼する必要があります。
この方法を使えば、正規輸入されていない右ハンドルのアメ車を手に入れることが可能ですが、価格が割高になったり、アフターサービスに制約が出たりする可能性があるため、購入の際は信頼できる業者を慎重に選ぶことが重要です。
人気のアメ車SUVに右ハンドルはある?
アメ車SUVカテゴリにおいて、右ハンドル仕様の選択肢はJeep(ジープ)ブランドが主力であり、他のブランドでは限定的なのが現状です。
ジープは世界戦略車として多くの国で販売されており、日本、イギリス、オーストラリアといった主要な右ハンドル市場を重視しています。そのため、日本に正規輸入されているジープの主要モデル(ラングラー、コンパスなど)は、基本的に右ハンドル仕様が標準となっています。
グランドチェロキーの右ハンドル生産終息
ただし、人気モデルであったグランドチェロキーは右ハンドル仕様の生産が終息し、日本でも2024年に「Final Edition」が発売されました。このように、モデルによっては状況が変化するため、常に最新の情報を確認することが重要です。
ジープ以外のブランドでは、過去にフォード・エクスプローラーなどで右ハンドル仕様が正規導入された例はありますが、現行モデルでの選択肢は非常に限られます。運転のしやすさを重視してアメ車SUVを選びたい方にとって、現時点ではジープが最も有力な選択肢となります。
購入できるアメ車 右ハンドル一覧と人気車種の今

車の広場:イメージ
- 新車で買えるアメ車の右ハンドル一覧
- シボレーの右ハンドル対応モデルとは
- マスタングに右ハンドル仕様は存在する?
- 右ハンドルのカマロは日本で乗れるのか
- ダッジチャレンジャーに右ハンドルはある?
- まとめ:希少なアメ車の右ハンドルの探し方
新車で買えるアメ車の右ハンドル一覧
2025年現在、日本国内の正規ディーラーで新車購入が可能な右ハンドルのアメ車は限られていますが、魅力的なモデルが存在します。特に近年、グローバル戦略の変化により、これまで考えられなかった車種にも右ハンドルが設定されるようになりました。
現在、新車で検討できる主な右ハンドルアメ車は以下の通りです。
メーカー | 車種名 | 特徴 |
---|---|---|
シボレー | コルベット (C8型) | 歴史上初めて右ハンドルが公式設定されたミッドシップスーパースポーツ。 |
ジープ | ラングラー、コンパスなど | 主要モデルの多くが右ハンドル仕様。グランドチェロキーは生産終息。 |
テスラ | モデル3、モデルY | アメリカ発のEVメーカー。日本ではこの2車種が右ハンドルで販売されている。 |
特にシボレー・コルベットに右ハンドルが設定されたことは画期的なニュースです。また、アメリカ発のEVメーカーであるテスラも、Model 3とModel Yは日本で右ハンドル仕様が購入可能です(※Model SとModel Xの右ハンドルは2023年に生産終了)。
シボレーの右ハンドル対応モデルとは
現在、シボレーブランドで正規に右ハンドル仕様が導入されているのは、スーパースポーツカーの「コルベット(C8型)」です。
2020年に登場した8代目コルベット(C8)は、その長い歴史の中で初めてエンジンを車体中央に搭載するミッドシップレイアウトを採用しました。これと同時に、開発当初からグローバル市場を見据えた世界戦略車として設計され、その一環として待望の右ハンドル仕様が生産されることになったのです。
なぜコルベットに右ハンドルが?
これは、ゼネラルモーターズ(GM)がコルベットをアメリカだけの特別なスポーツカーではなく、フェラーリやランボルギーニといったヨーロッパのスーパーカーと競合するグローバルなアイコンに育て上げたいという強い意志の表れです。日本やイギリス、オーストラリアといった市場で本格的に販売するため、右ハンドル仕様の導入は不可欠な戦略でした。
この結果、日本のドライバーは、左側通行の道路でも車両感覚を掴みやすく、安全かつ快適にコルベットの圧倒的なパフォーマンスを味わうことができるようになりました。
マスタングに右ハンドル仕様は存在する?
はい、フォード・マスタングには右ハンドル仕様が存在します。しかし、日本での入手方法は並行輸入が基本となります。
フォードは2016年に日本市場から事業を撤退しており、現在、マスタングの正規輸入は行われていません。一方で、マスタングは世界的に人気の高い車種であり、イギリスやオーストラリアといった右ハンドル市場では現行モデルも公式に販売されています。
この海外で販売されている右ハンドル仕様車を、日本の専門業者が並行輸入という形で仕入れて販売しています。そのため、日本国内でも右ハンドルのマスタングを手に入れることは可能です。
並行輸入マスタングの注意点
- 価格:輸入コストや国内保安基準への適合費用が上乗せされるため、一般的に割高になる傾向があります。
- 保証と整備:メーカーの正規保証は適用されません。メンテナンスや修理は、購入した販売店やアメ車に詳しい専門工場に相談する必要があります。
- 仕様:ナビゲーションシステムやラジオの周波数などが日本仕様と異なる場合があります。
こうした注意点はありますが、どうしても右ハンドルでマスタングに乗りたいという方にとっては、並行輸入が唯一の選択肢となります。
右ハンドルのカマロは日本で乗れるのか
マスタングのライバルとして人気の高いシボレー・カマロですが、残念ながら公式な右ハンドル仕様は存在しません。
さらに、6代目カマロは2024年1月をもって生産が終了しており、日本では最終モデル「FINAL EDITION」が限定導入されたのを最後に、現在シボレー日本のラインアップからは外れています。そのため、新車での正規購入は基本的にできません。
オーストラリアの特殊な右ハンドル仕様
過去にオーストラリアでは、GMの関連会社が左ハンドルのカマロを輸入し、現地で右ハンドルに改造して販売していた例(後付け改修)はありました。しかし、これは工場出荷時から右ハンドルとして生産されたものではなく、極めて特殊なケースです。
日本でカマロに乗る場合は、中古市場で左ハンドル仕様車を探すのが一般的な方法となります。
ダッジチャレンジャーに右ハンドルはある?
マッスルカーの象徴的存在であるダッジ・チャレンジャーにも、残念ながら公式な右ハンドル仕様は存在しません。
チャレンジャーを生産するステランティス(旧FCA)は、このモデルを主に北米市場向けとして位置付けています。マスタングのようにイギリスやオーストラリアといった右ハンドル市場で積極的に販売展開はしておらず、工場で右ハンドル仕様を生産する計画はありません。
マッスルカーと右ハンドル
カマロやチャレンジャーといった伝統的なマッスルカーは、アメリカの自動車文化を色濃く反映したモデルです。そのため、グローバル展開を前提としたスポーツカー(コルベットなど)とは異なり、あえて北米市場の魅力を前面に出す戦略を取ることが多く、右ハンドル化には消極的な傾向があります。
したがって、ダッジ・チャレンジャーに乗りたい場合も、専門業者が並行輸入する左ハンドル仕様車を探すことになります。独特の存在感とパワーを味わうためには、左ハンドルに慣れる必要があると言えるでしょう。
まとめ:希少なアメ車の右ハンドルの探し方
- アメ車に右ハンドルが少ないのはアメリカが左ハンドル文化圏だから
- 右ハンドル仕様の開発には多額のコストがかかるのが主な理由
- アメリカで右ハンドル車は禁止ではないが登録には制約がある
- 日本が右ハンドルなのは歴史的にイギリスの交通ルールを参考にしたため
- 右ハンドルは世界の国・地域数で約30%、人口比で約35%が採用している
- 新車で買える右ハンドルアメ車はシボレーコルベットやジープの一部車種
- テスラはModel 3とModel Yが右ハンドルで購入可能
- アメ車SUVではジープが右ハンドルの主力だが他ブランドは限定的
- グランドチェロキーの右ハンドルは生産終息している
- フォードマスタングには右ハンドルが存在するが並行輸入での購入が基本
- シボレーカマロは2024年に生産終了し公式の右ハンドル仕様もない
- ダッジチャレンジャーにも公式の右ハンドル仕様は存在しない
- 正規輸入されていない車種は信頼できる並行輸入業者を探す必要がある
- 並行輸入車は価格や保証、メンテナンス面で注意が必要
- 運転のしやすさを最優先するならジープブランドが有力な選択肢となる
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